近年どんどん増えている、合葬式墓地について詳しく説明します。
ここ10年ほどで、市町村が運営する合葬式墓地(がっそうしきぼち)が本当によく増えています。近畿地方だけでも、神戸市の鵯越墓園、大阪市の瓜破霊園、飯盛霊園の虹の丘、明石市の石ヶ谷墓園、芦屋市の芦屋市霊園など。少し名前を挙げただけでもこんな沢山出てきます。どこも大規模な公営霊園の敷地内に建設されています。
お墓や永代供養墓を探している方も、恐らく一度は合葬式墓地という単語を目にしているはず。
そこで、今回は、合葬式墓地とは何なのか、合葬式墓地が増えている理由、近畿圏の合葬式墓地はどこにあるのか、といった合葬式墓地に関する疑問にせまっていきます。
このページは、お墓や永代供養をお探しの方や、墓じまいやお墓の引っ越しを検討している方に向けて作成しています。
合葬式墓地とは
普段は聞かない言葉ですから、読み方も難しいですよね。
「合葬式」は、ガッソウシキ、と読みます。
「合葬式墓地」は、ガッソウシキボチ、と読みます。
合葬式墓地を略して、合葬墓(ガッソウボ)と呼んでいる場合もあります。
ゴウソウシキと読み間違う方がよくいらっしゃいます。それでも分かるのでOK◎だと思います。合葬式の意味をきちんと捉えることの方が、重要だと思っています。
合葬式墓地は、この十数年ほどで本当によく、市町村で運営している公営霊園の中に建設されるようになってきました。近畿地方で言いますと、2020年には、伊丹市の神津墓地や芦屋市の芦屋市霊園でも新しい合葬式墓地が開設され、使用者の募集が行われていました。
最近よく耳にする、合葬式墓地って何のこと?
合葬式墓地とは、1つの大きなお墓に複数の遺骨を共同で埋葬する墓地のことです。合葬式墓地を言い換えると、合同墓地です。
このページでは、主に市町村の公営霊園にある合葬式墓地を取り上げていますが、似たような合同墓地は、お寺や民間霊園にも存在します。
お寺にある合同墓地は、合祀墓(ゴウシボ)と呼んだりします。合祀墓も、合葬式墓地と同じ用途で、1つのお墓に複数の遺骨を共同で埋葬する墓地のことです。ではなぜ、お寺は合祀という言葉を使い、市町村の公営霊園は合葬という言葉を使うのでしょうか。
その理由は、合祀という言葉の意味合いが関係します。「合祀」とは(仏や神、霊を)合わせて祀る、という意味があります。つまり、合祀という言葉には、お祀りするという少し宗教的な要素が含まれるので、市町村の公営霊園では、合葬=合わせて埋葬する、という言葉を使っているのです。実際に、お寺の合祀墓にはお釈迦様やお地蔵様といった石像が隣に建てられていることが多いです。
一方、市町村の公営霊園に建てられた合葬式墓地には、お釈迦様やお地蔵様といった石像は見かけません。その代わり、合葬式墓地の象徴として多く見かけるのは、球体の石です。どうして球体の石がシンボルになっているのか分かりませんが、私がこれまで見てきた広い公営霊園で、大きな球体の石が見える施設は、ほぼ合葬式墓地です。
合葬式墓地の設置が増えている理由
市町村の公営霊園に合葬式墓地が増え続けている理由は、墓守りや跡継ぎがいないお墓(もしくは遺骨)が多くなってきたからです。お墓じまいや、無縁墓と呼ばれて誰も管理しなくなったお墓がどんどん増えていき、それらの遺骨の行き先が必要になってきたのです。市町村の方々はその迷子になった遺骨を共同で埋葬できる合葬式墓地を設置しだしたのです。
さらに、合葬式墓地を設置したことによって公営霊園の中のお墓じまい需要も増加してきています。
例えば、神戸市の鵯越墓園だと、鵯越墓園の一般墓地の墓石を撤去して、同じ霊園内にできた合葬式墓地へ移転するというケースが、合葬式墓地が開設した当時からよくあります。そして、一般墓地の使用者は減っていき、返還墓地の数は増えていきます。
費用面でみると、一般墓地を返還して合葬式墓地へ遺骨を埋葬することで、年間の管理料を支払う必要がなくなります。通常9㎡や12㎡ほどの広い墓地を使っている方は、年間に1万円~1.5万円程の支払いを代が変わるまでずっと支払い続けなければなりません。墓守をする跡継ぎのいらっしゃる方は、その管理料も支払い続ける意味がありますが、跡継ぎの居なくていずれはお墓じまいをされる方にとってはその管理料を支払い続けるよりも、合葬式墓地に空きがある間にお墓じまいをしてしまおうと思われるようです。
このような、核家族化によって増えてきた無縁墓やお墓じまいの問題に対応するために、近年、市町村などで合葬式墓地の開設が増えていると考えられます。
合葬式墓地の決まり・ルール
続いて、合葬式墓地の決まりや資格要件と呼ばれる申し込むための条件、埋葬形式やタイプについて説明していきます。
どういう人が申し込めるの?
最初から合葬はちょっと…。
個別に納骨できないの?
合葬式墓地の申し込み資格
市町村が運営されている合葬式墓地には、資格要件(条件)があります。その要件をクリアしていると、合葬式墓地を申し込めます。
墓地によって多少、条件が異なりますが、ほとんどが次のような申込資格であることが多いです。
市町村の住民でなくても申し込める場合もあります。例えば、宝塚市の宝塚すみれ墓苑などです。また、年齢制限がありますが生前予約や生前申し込みのできる合葬式墓地もあります。
申し込みが出来る時期や受付期間が決まっている墓地もあります。常時で募集している合葬式墓地もみかけますが、人気度の高い合葬式墓地は、大抵、申し込み期間と受け入れ体数が決まっています。そういった人気のある墓地に申し込みたい方は、募集を逃さないよう、常に情報をチェックしておく必要があります。
合葬式墓地の埋葬形式
合葬式墓地には、直接合葬するタイプと、一定期間、個別に安置できるタイプがあります。申し込みを行う時にどちらのタイプで申し込むのかを選べます。墓地によっては、直接合葬しか出来ないところもあります。
例えば、将来の跡継ぎはいないのだけれど、あと20年間は、自分が生きている間にお参りをしたり故人の供養を行ったりをしたい、と望まれる方は少なくありません。供養は遺されたものの気持ちです。
その場合、個別安置という方法を選ぶと、定められた一定期間は個別に遺骨を安置できて、自分以外の跡継ぎがいなくなったら合葬される、ということが可能なのです。
合葬を行うと、特定の遺骨だけを取り出すことができません。皆さん一緒に埋葬されているので、どれが誰の遺骨かを把握することが困難だからです。
個別安置の定められた期間は、墓地によって異なるのできちんと確認する必要がありますが、これまで色んな合葬式墓地の見てきた感覚で言うと、10年か20年を選べるところが多いように思います。費用面だと、直接合葬よりも個別安置のほうが高くなります。さらに、安置期間を増すとその分高くなります。
また、記名板に故人の名前を彫ることができる合葬式墓地は多いです。せめて、名前を残しておきたい、という要望に応えるためです。記名板に故人の名前を残すかどうかは、申し込み時に決めることができます。
近畿地方の合葬式墓地一覧
近畿地方にある合葬式墓地を一覧にまとめてみました。合葬式墓地を検討されている方はぜひ参考にしてください。地域指定のない墓地もあるので、お住まいの市町村に合葬式墓地がなくても、他市の合葬式墓地を申し込むことも可能です。(申込資格要件をご確認ください。)
大阪府の合葬式墓地
兵庫県の合葬式墓地
京都府の合葬式墓地
奈良県の合葬式墓地
滋賀県の合葬式墓地
和歌山県の合葬式墓地
令和3年11月現在、和歌山県内にある公営の合葬式墓地が、確認することができませんでした。
【まとめ】合葬式墓地ってどんな墓地?
いかがでしたでしょうか?
ここまで、合葬式墓地がどんなお墓なのか、どんな人が申し込めるのか、について説明してきました。また、近畿地方にある合葬式墓地もまとめて一覧でご紹介しました。
時代が変わって少子高齢化や核家族化が進み、お墓の形式はどんどん変わってきています。ごく最近では、ネット霊園と呼ばれる仮想の墓地も開発されるようになってきました。合葬式墓地もまだまだ新しいお墓の形ですが、段々と世間に浸透してきていると感じます。
たまに、合葬式墓地のことを「永代供養」と表現される方がいます。永代供養とは、永代に亘って供養することを意味するので、お寺や宗教法人の民間霊園などが表現することの多い言葉です。
一方、このページで説明してきた合葬式墓地は、あまり宗教的な要素の見られない公営の墓地がほとんどなので、永代供養と表現するのは少し違うように思います。
世の中には、永代供養や終活という言葉が先走り、合葬式墓地というお墓の形があまり認知されていないように感じています。
お墓じまいやお墓の引っ越し、ご自身や家族の将来のお墓について考える時に、合葬式墓地という手段もあることを、ぜひ知っておいてほしいと思います。